総入れ歯ライブ実習コースに実技講師として参加しました

6月に続き、歯科医師と歯科技工士向けに、無歯顎症という難しい症状を、座学ではなく被験者を迎え、実際の治療風景をみせる実践的な研修「総入れ歯ライブ実習コース」を行いました。(講師としての参加)

総入れ歯の臨床総入れ歯ライブ実習コースのアシスタント

IPSGの総入れ歯ライブ実習コースとは

IPSG包括歯科医療研究会では、稲葉 繁先生が20年前に創立されて以来、この2者(歯科医師と歯科技工士)の連係実習コースを、3日間の研修期間で行っています。無歯顎症治療の初めから終わりまでを通してライブで研修でき、3日目に患者様と共に食事をします。

歯科医師と歯科技工士には、知識を集中的に学べるまたとない機会です。総入れ歯で見た目が良く・話す・食事することを改善・機能できるようするには、歯科医師と歯科技工士の確かな知識と技術ができなければなりません。

また、一般的にこの2者の連係プレーを同時に被験者に実践する研修会はありません。

総入れ歯治療における、歯科医師と技工士の連携

講師としての総入れ歯ライブ実習コースへの参加

今回、IPSG研修会の創立20年間で初めて、私が指導者として信頼できる歯科技工士とともにこの研修を行うことを任命されました。まさに「白羽の矢が立つ」また「晴天の霹靂」という気持ちです。

これには「上下顎同時印象法による総入れ歯治療」という方法を正しく学んで、治療ステップを確実に実践することで、稲葉繁先生と熟練した歯科技工士でなくても、誰にでもできると受講生に理解してもらう、という意図があります。

総入れ歯制作前の情報収集

総入れ歯制作前の情報収集

歯がない方の総入れ歯治療の準備では、顔のバランス・歯槽骨と粘膜の状態・顎関節など、多くの情報を収集します。

下顎と上顎の状態のチェック

顎骨と粘膜を研究するための型取りも、しっかり解剖的指標を記録できていなければなりません。

総入れ歯治療に成功するためのポイント

総入れ歯治療に成功するためのポイントは、
①歯科医師は口を閉じる時の下顎の位置を適切に決定できるか
②口の中の筋肉・粘膜と舌や歯槽骨の空間を、いかに隅々まで精密に型取ることができるか
です。

そして、歯科技工士さんは、
①顎の関節を考慮した、舌の動きを妨げない人工歯の並べ方ができるか
②最終成型法を誤差なく精密に行えるか
です。

総入れ歯の位置の決定方法

歯がないので、下顎が上顎に対してどの位置がいいのかを決めることは、一般的には難しい作業です。また、その位置が、総入れ歯の人工の歯の咬み合せの出発点なるんですね。

それには顎の関節が基準になります。顎を前後左右に動かしていただくと出発点が分かります。この出発点が、下顎の正しい位置と決定します。

上下顎同時印象法による総入れ歯制作

上下顎同時印象法による総入れ歯制作

「上下顎同時印象法」で口に中の記録をとります。口を閉じ内圧をかけて入れ歯のスペースを型取るため、総入れ歯が維持安定するための周囲筋肉と、舌や歯槽骨の情報を得ることができます。

歯科技工士さんによる模型制作

歯科技工士さんは、歯科医師が型取った記録から石膏で模型を作ります。

それから人工の歯を配列したり、入れ歯の外形をつくります。特に下顎は、入れ歯が安定しないことがよく起こりがちですが、この方法は、上下顎同時印象の時に嚥下をして舌を機能させたり、周囲の筋肉を記録しているので、入れ歯の周囲が粘膜にぴったりして舌の動きを邪魔せず、安定した入れ歯ができます。歯科技工士さんの精密な作業は、総入れ歯治療の重要なポイントなのです。

総入れ歯の試適合

総入れ歯の試適合

人工の歯と入れ歯の形ができたなら、次は試適合です。オーダーメードスーツのように、完成前の最終チェックを行います。

咬み合わせ位置・入れ歯の適合・審美・発音を確認します。ロウでできた入れ歯なので、試食はできません。この時点で、歯科医が異常を察知したり、患者さんの希望にそぐわないことがあれば修正します。

今回、人工歯の色を以前より白くしたいとの希望があり、明るいものにしました。まさにオートクチュール!

総入れ歯の歯の明るさの調整

総入れ歯の最終調整、食事でのテスト

歯科技工士さんから完成してきた入れ歯は、まだ未完成です。これから歯科医師が微調整して、人工臓器としての総入れ歯を完成させます。歯科技工士さんの精度と調整が良いので、入れ歯の咬み合わせ調整はほとんどしません。

総入れ歯の最終調整、食事でのテスト

患者様と食事をし、入れ歯が機能しているのを確認します。上図はしっかり全体で咬んでいる図、下図は顎を横にずらして人工歯で食物をすりつぶす咀嚼時の動きです。咀嚼のいろいろな動きをしても、入れ歯は外れず、顎の関節に順応して食事できるんです。

総入れ歯のライブ実習コースを終えて

総入れ歯の最終調整、食事でのテスト

「上下同時印象法による総入れ歯」は、日本の歯科大学では教育されていないので、IPSG指導者としては治療ステップを確実に踏み、実際の手技と理論を解りやすいように説明しながら研修を進めていく重要な役割です。

私は研修会に入会してから15年間の研修アシスタントをして、自院でも行っているこの治療法はとても成果が良いものであることは良く体感しています。そして、これが無歯顎症の治療法として、広く歯科界のスタンダードになって欲しいと思っています。

後日、被験者の入れ歯メインテナンスをかねて、稲葉先生に確認していただきました。頬の張り具合が気になるとのことで、調整をしました。IPSG研修会実習後の約2週間以来、それ以外は問題なく、日常生活で使用し、食事しているそうです。

今回の研修で、私はプロフェッショナルの前で実践し、元大学教授に確認されるというのは、ドイツの歯科大学の卒業試験のようでなかなか緊張しましたし、とても光栄な経験でした。また、サポートしてくださった研修会のスタッフの皆様にもとても感謝しております。ありがとうございました。 

千葉県松戸市 ひかり・歯科クリニック

投稿日:2015年8月8日|カテゴリ:講演・発表 活動, 院長ブログ